微細軸加工技術


1 はじめに

 近年、微細穴プレス打ち抜き用パンチ、ICチェッカ用プローブなど微細軸のニーズが高まっている。これらは、硬質材料であり、高アスペクト比複雑形状という点で共通している。
 従来加工されている微細軸の例としては、旋削による直径0.1mm程度の腕時計部品、センターレス研削による直径0.04mmのマイクロドリルブランク等が挙げられるが、それぞれ材料が限定されたり高アスペクト比の加工が難しく形状が限定される。また、線引きによる細線を軸として利用することもできるが同様の問題がある。したがって、従来の加工法ではこれからますます細径化し複雑形状が求められる微細軸の加工に対応していくことが困難である。
 そこで、新しい微細軸加工方法を探るために設備を導入し、加工実験をおこなったので報告する。

2 放電加工による微細軸加工

 金型や治工具類の加工に広く使われている放電加工は、工具電極と工作物の間で放電を繰り返すことによって工具電極形状を工作物に転写する非接触加工法であるから、工具電極や工作物に作用する物理的な力は極めて小さい。このことは、剛性の低い微細な工具による加工や微細な工作物を加工する場合に極めて有利である。そこで、放電加工による微細軸加工を試みた。

 前章で報告した超微細放電加工機には、

図1 WEDG概念図

ワイヤ放電研削加工(WEDG:Wire Electro Discharge Grinding)法による軸加工機能が備わっている。図1にその概略を示す。工具電極となるワイヤがワイヤガイドで支持されている部分で、工作物と間に微細放電を発生させて加工する。これにより直径10μm以下の軸を加工することができる。

 実際の加工では、直径40μmまでは切込み10μmで粗加工(コンデンサ3300pF)を行い、それ以降は切込みを5μm以下に抑え、目標とする直径まで仕上げ加工(コンデンサ220pF以下)を行った。軸の長さは、直径10μmのときで、約300μm程度までは安定して加工することができた。

3 研削による微細軸加工

 従来、硬質材料を能率良くしかも精度良く加工する方法として研削加工が利用されている。この材料を微小切込みで加工するという研削加工の特徴は微細軸の加工に適しているといえる。そこで、研削による微細軸加工を試みた。

3.1 工作機械

 使用した工作機械は全自動外径研削盤(CNC100P4、ロロマチック社製)で、工作物送り出しによる加工方法を大きな特徴としている。図2に加工方法の概念図を示す。

図2 研削加工方法概念図

即ち、粗研削砥石と僅か後方に仕上げ研削砥石を対向して配置し、フローティングチャックに把持され回転している工作物を研削砥石近傍でVブロック上にローラで押さえつけて、送り出しながら端面加工する方法である。

この方法は、通常のプランジカットやトラバースカットによる円筒研削と比較して、軸を曲げる方向の力が格段に軽減できるので、微細軸の加工に適していると考えられる。

3.2 加 工

仕上げ目標寸法と使用した研削砥石及び加工条件は次のとおりである。

目標寸法   直径 0.02mm × 長さ 10mm (アスペクト比 500)
研削砥石   粗加工 種類ASD64-C100-BC3 直径200mm 回転数2880rpm
仕上げ加工 種類 SD7 -C125-BC4 直径125mm 回転数3000rpm
工作物    超微粒子超硬合金棒 直径1.0mm 回転数1000rpm
研削油    ROLLOMATIC LUBE-710CF
切込量    粗加工 0.487mm
        仕上げ加工 0.003mm
送り量     0.1mm/sec

3.3 結 果

 目標どおりの寸法が加工できた。図3に、加工した、直径0.02mm、長さ10mm、アスペクト比500の軸の走査型電子顕微鏡写真を示す。

図3 微細軸電子顕微鏡写真(0.02mm軸と毛髪)

 寸法の追い込みは、最初の工作物の仕上がり寸法を測定して目標寸法からの誤差を求め、次の工作物を加工する時に補正してやることによって達成できる。
 寸法精度の劣化は、研削砥石の摩耗と機械の経時変位によって起こり、前者は累積加工長さの増加とともに研削砥石エッジ部の摩耗が増長して研削砥石引き上げ部分に摩耗形状が取り残され、後者は機械の熱変形によるVブロックと研削砥石の相対変位によって軸径が変化する。図4に仕上げ研削砥石の摩耗による取り残し量の推移を示す。加工量の増加とともに取り残し量は増えるが、一般の摩耗曲線と同じように初期摩耗は激しく定常摩耗になると緩やかになることがわかる。


図4 仕上げ研削砥石の摩耗による取り残し量

 したがって、段付き軸内側角のRが厳しく要求される場合は、摩耗した研削砥石エッジ部をドレッシングによって適宜修正してやる必要がある。一方、連続運転中の熱変位による軸径変化は緩やかなので補正する回数は比較的少なくて良い。一例では、1時間連続加工して軸直径の変化は0.001mmであった。
 また、この全自動外径研削盤で極めて微細な軸を加工する場合は、研削液による軸の折損が問題になる。実験では、直径0.03mmの軸までは比較的容易に高アスペクト比の加工ができたが、直径0.02mmになると折損が頻発し加工できなかった。そこで研削液の注ぎ方を工夫し、加工し終わった軸にできるだけ当たらないようにしたところ高アスペクト比の加工が可能になった。

4 おわりに

 放電加工による微細軸加工では、タングステンを目標軸径まで安定して加工することができた。
また、研削による超微粒子超硬合金の微細軸加工で目標とする軸径、アスペクト比を達成することができた。 到達加工軸径、アスペクト比は材料によって異なるといわれているので、材料毎に加工限界を追求する必要がある。

 

 

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